第6話 斑の羊     かがわとわ

 あの日、制服のスカートが切り取られていたショックで、秋江はそのまま早退した。担任から両親にも知らせが行った。秋江は学校にも両親にも、知らぬうちに切られたと説明し、電車で触られたことは黙した。体調が悪くなり、遅刻した事とは無関係だと。運悪くたまたま被害に遭ったと装った。学校からは、保護者と生徒に向けて「変質者情報」の一斉メールが送信され、ママは心配のあまり、事件後一週間は車で学校まで送ってくれた。その後、似たような被害情報が挙がらなかったこともあり、切り取り事件は周りの話題から消えていった。が、秋江の気持ちは収まりようがなかった。  ユッコのお父さんが。きっとそうだ。布の切り貼り。愛おしそうになぞっていたあの指。秋江のスカート生地もおじさんのコレクションに加わったのだ。 ──布たちは、おじさんの集めた宝物なんだよ── 静かな低い声が、耳元で蘇えるたび、それは不快さから怒りへと変わって行った。舌の黄色いおやじは無実で、チカンは、ユッコのお父さんだった。切った上に、触ったのだ。それとも、切った人と触った人は別? このまま、黙っていれば、忘れてしまえばいいのか。この先、ユッコには知らんふりして接していくのか。それとも適当に理由をつけて、もうユッコと会わなければいいのか。──そんなの、嫌だ。ユッコに会えなくなるなんて嫌だ。 電車通学に戻った秋江は、心臓をばくばくさせながら、こっそりユッコのお父さんを後方からスマホで撮影し、十月の末にユッコを呼び出した。 「この人、チカンなの」  激しく動揺した…

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